2016/10/9 職業としての小説家 村上春樹5 どこまでも個人的でフィジカルな営み
【走った距離】 23.18km
【今月の累積距離】 93.4km
【ペース】 平均 5'35"/km、 最高 5'21"/km
【天気】 くもり
【気温】 最高 23℃、最低 22℃
【体重】 62.2kg
【コース】
豊里大橋~枚方大橋
【コメント】
村上春樹にとってのランニングとは「人生にとってとにかくやらなくちゃならないこと」
私にとってランニングとは単に楽しいだけである
日々走ることが僕にとってどのような意味を持つのか、僕自身には長い間そのことが
もうひとつよくわかりませんでした。毎日走っていればもちろん身体は健康になります。
脂肪を落とし、バランスのとれた筋肉をつけることもできますし、体重のコントロールも
できます。しかしそれだけのことじゃないんだ、と僕は常日頃感じていました。その奥には
もっと大事な何かがあるはずだと。でもその「何か」がどういうものなのか、自分でも
はっきりとはわからないし、自分でもよくわからないものを他人に説明することもできません。
でもとりあえず意味が今ひとつ把握できないまま、この走るという習慣を、僕はしつこく
がんばって維持してきました。三十年というのはずいぶん長い歳月です。
そのあいだずっとひとつの習慣を変わらず維持していくには、やはりかなりの努力を
必要とします。どうしてそんなことができたのか? 走るという行為が、いくつかの
「僕がこの人生においてやらなくてはならないものごと」の内容を、具体的に簡潔に
表象しているような気がしたからです。そういう大まかな、しかし強い実感(体感)が
ありました。だから「今日はけっこう身体がきついな。あまり走りたくないな」と思うときでも、
「これは僕の人生にとってとにかくやらなくちゃならないことなんだ」と自分に言い聞かせて、
ほとんど理屈抜きで走りました。その文句は今でも、僕にとってのひとつのマントラみたいに
なっています。「これは僕の人生にとってとにかくやらなくちゃならないことなんだ」
というのが。
何も「走ること自体が善である」と考えているわけではありません。
走ることはただの走ることです。善も不善もありません、
もしあなたが「走るなんていやだ」と思うのなら、無理して走る必要はありません。
走るも走らないも、そんなのは個人の自由です。
僕は「さあ、みんなで走りましょう」みたいな提唱をしているわけではありません。
街を歩いていて、高校生が冬の朝に全員で外を走らされているのを見ると、「気の毒に。
中にはきっと走りたくない人もいるだろうに」とつい同情してしまうくらいです。本当に。
ただ僕個人に関して言えば、走るという行為は、それなりに大きな意味を持っていた
ということです。というか、それが僕にとって、あるいは僕がやろうとしていることにとって、
何らかのかたちで必要とされる行為なんだというナチュラルな認識が、
ずっと変わることなく僕の内にありました。そういう思いが、いつも僕の背中を
後ろから押してくれていたわけです。酷寒の朝に、酷暑の昼に、
身体がだるくて気持ちが乗らないようなときに、
「さあ、がんばって今日も走ろうぜ」と温かく励ましてくれました。
閑話休題。『風の歌を聴け』と『1973年のピンボール』は「キッチン・テーブル小説」
「いや、俺は書斎みたいな立派なものは持っていないよ」という人も、
おそらく少なからずおられるでしょう。僕も小説を書き始めたころには、
書斎なんてものは持ち合わせていませんでした。千駄ヶ谷の鳩森八幡神社の近くにある、
狭いアパート(今は取り壊されましたが)で、台所のテーブルに向かい、
家人が寝てしまってから、深夜に一人で四百字詰原稿用紙に向かってかさかさと
ペンを走らせていました。そのようにして『風の歌を聴け』と『1973年のピンボール』という、
最初の二冊の小説を書き上げました。僕はこの二作を「キッチン・テーブル小説」と
個人的に(勝手に)名付けています。
【今月の累積距離】 93.4km
【ペース】 平均 5'35"/km、 最高 5'21"/km
【天気】 くもり
【気温】 最高 23℃、最低 22℃
【体重】 62.2kg
【コース】
豊里大橋~枚方大橋
【コメント】
村上春樹にとってのランニングとは「人生にとってとにかくやらなくちゃならないこと」
私にとってランニングとは単に楽しいだけである
日々走ることが僕にとってどのような意味を持つのか、僕自身には長い間そのことが
もうひとつよくわかりませんでした。毎日走っていればもちろん身体は健康になります。
脂肪を落とし、バランスのとれた筋肉をつけることもできますし、体重のコントロールも
できます。しかしそれだけのことじゃないんだ、と僕は常日頃感じていました。その奥には
もっと大事な何かがあるはずだと。でもその「何か」がどういうものなのか、自分でも
はっきりとはわからないし、自分でもよくわからないものを他人に説明することもできません。
でもとりあえず意味が今ひとつ把握できないまま、この走るという習慣を、僕はしつこく
がんばって維持してきました。三十年というのはずいぶん長い歳月です。
そのあいだずっとひとつの習慣を変わらず維持していくには、やはりかなりの努力を
必要とします。どうしてそんなことができたのか? 走るという行為が、いくつかの
「僕がこの人生においてやらなくてはならないものごと」の内容を、具体的に簡潔に
表象しているような気がしたからです。そういう大まかな、しかし強い実感(体感)が
ありました。だから「今日はけっこう身体がきついな。あまり走りたくないな」と思うときでも、
「これは僕の人生にとってとにかくやらなくちゃならないことなんだ」と自分に言い聞かせて、
ほとんど理屈抜きで走りました。その文句は今でも、僕にとってのひとつのマントラみたいに
なっています。「これは僕の人生にとってとにかくやらなくちゃならないことなんだ」
というのが。
何も「走ること自体が善である」と考えているわけではありません。
走ることはただの走ることです。善も不善もありません、
もしあなたが「走るなんていやだ」と思うのなら、無理して走る必要はありません。
走るも走らないも、そんなのは個人の自由です。
僕は「さあ、みんなで走りましょう」みたいな提唱をしているわけではありません。
街を歩いていて、高校生が冬の朝に全員で外を走らされているのを見ると、「気の毒に。
中にはきっと走りたくない人もいるだろうに」とつい同情してしまうくらいです。本当に。
ただ僕個人に関して言えば、走るという行為は、それなりに大きな意味を持っていた
ということです。というか、それが僕にとって、あるいは僕がやろうとしていることにとって、
何らかのかたちで必要とされる行為なんだというナチュラルな認識が、
ずっと変わることなく僕の内にありました。そういう思いが、いつも僕の背中を
後ろから押してくれていたわけです。酷寒の朝に、酷暑の昼に、
身体がだるくて気持ちが乗らないようなときに、
「さあ、がんばって今日も走ろうぜ」と温かく励ましてくれました。
閑話休題。『風の歌を聴け』と『1973年のピンボール』は「キッチン・テーブル小説」
「いや、俺は書斎みたいな立派なものは持っていないよ」という人も、
おそらく少なからずおられるでしょう。僕も小説を書き始めたころには、
書斎なんてものは持ち合わせていませんでした。千駄ヶ谷の鳩森八幡神社の近くにある、
狭いアパート(今は取り壊されましたが)で、台所のテーブルに向かい、
家人が寝てしまってから、深夜に一人で四百字詰原稿用紙に向かってかさかさと
ペンを走らせていました。そのようにして『風の歌を聴け』と『1973年のピンボール』という、
最初の二冊の小説を書き上げました。僕はこの二作を「キッチン・テーブル小説」と
個人的に(勝手に)名付けています。
by totsutaki3
| 2016-10-09 17:37
| 読書
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