自省録2

2018/1/16 「村上春樹と私」ジェイ・ルービン 1

【走った距離】  8.79km
【今月の累積距離】  272.93km
【ペース】 平均 6'22"/km、 最高 5'58"/km
【天気】 晴れ
【気温】 最高 16℃、最低 6℃
【コース】自宅~会社
【コメント】
 村上春樹の作品の翻訳者であるハーバード大学名誉教授のジェイ・ルービンが、
 村上春樹作品や日本文学の翻訳について語る。

 本日は名人芸のようなルービンの翻訳の紹介。

 ■名詞の単数と複数の区別
  日本語では名詞の単数と複数の区別がないので、どちらを指すこともなく
  文章にすることができるが、英語では可算名詞であれば単数か複数かが
  即座に分かってしまう。この問題を回避するためにルービンは可算名詞を
  不可算名詞に置き換えたり、名詞を省略したりと苦労する。逆に日本人は
  単数と複数の違いを理屈では分かってもニュアンスまで理解できない。
 

 『IQ84』の世界では、ある人物は、空には二つの月が存在すると確信する。
 一つは通常の黄色い大きな月であり、もう一つは小さめの緑色をした歪な月である。
 二つの月が見える人物は当然、他の人にも見えるかどうか尋ねたいと思う。
 しかし、頭が変になったかと思われるのが怖くて、その事実を確かめることを躊躇する。
 したがって、二つの月は、疎外感、つまり、他人に正直に述べることを不可能にする、
 疎外感のシンボルとなる。日本語では、登場人物は、月が一つ見えるか二つ見えるかを
 明らかにすることなく、月について語ることができる。青豆という女がタマルという男に
 理由は言わないで、月に気付かせようとする短い会話があるが、それに続いて、
 タマルが青豆との電話中に、突然、「今日は月がきれいだ」と言って、青豆を驚かせる。
 そして、次の数行はこの言葉の単数、複数の曖昧さによって成り立つ。


 「今日は月がきれいだ」
  青豆は電話口で小さく顔をしかめた。「どうして急に月の話なんかするの?」
 「俺だってたまには月の話くらいするさ」
 「もちろん」と青豆は言った。でもあなたは何かの必然性なしに花鳥風月について
  電話で語るタイプじゃない。
  タマルは電話口で少し黙っていたが、それから口を開いた。
 「この前、あんたが電話で月の話を持ち出した。覚えているか? 
  それ以来月のことが何かしら頭にひっかかっていた。そしてさっき空を見たら、
  雲ひとつなく空が澄んで、月がきれいだった」
  それで月は何個あった、と青豆はもう少しで問いただしそうになった。
  しかし思いとどまった。それは危険すぎる。


 こういうところの「月」を「moon-viewing」に変えたり、「月」を省略したりして、
 単数、複数の問題を解決することにした。


  [Tamaru said] "It's a nice night for moon viewing." [月→月見]
  Aomame frowned slightly into the phone. "Where did that come from all
  of a sudden?" [月省略]

  "Even I am not unconscious of natural beauty,
  I will have you know." [月省略]
  "No, of course not," Aomame said But you are not the type
   to disclose poetic subject matter [花鳥風月] on the phone
   without some particular necessity, either.

   After another short silence at his end. Tamaru said,
   "You are the one who brought up moon viewing [月→月見]
   the last time we talked on the phone remember?
   I've been thinking about it [月→it=月見] ever since espesically
   when I looked up at the sky a little while ago
   and it [月省略; it=空または全体の状態] was so clear not a cloud
   anywhere."
   Aomame was on the verge of asking him how many moons [複数]
   he had seen in that clear sky but she stopped herself.
   lt was too fraught with danger.
 
  

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by totsutaki3 | 2018-01-16 21:29 | 読書 | Comments(0)

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